夏の終わりのような、秋のはじまりの日。
友とテントと山へ出かけた。
時間に追われて、ただ、あくせくとした夏を終え、ふと一呼吸。
あたしも友も、そんなタイミングだった。
どこへ行こうー?
散々悩んで、決めたのは、瑞牆山と金峰山。
ふだんのふたりのベース、北アルプスとは、きっとちがった山になる!
そんな期待に胸をふくらませて。
今年何度目かの台風が近づき、山へ向かった日は、雨だった。
瑞牆山への登山は、早々にあきらめて、
テントを張って、ただひたすら、のんびり。
富士見平小屋の、若いご主人カップルにあたたかく迎えていただき、
テント泊なのに、さながら山小屋泊のような、至福のおこもりステイ。
電気はないんだ、と笑うおふたり。
ランプのあたたかい光が、小屋をじんわりと包んでいた。
スーパーで見つけた、ペットボトルワイン。
わざわざ詰め替えなくてもいいし、
特殊なペットボトルで、ワインの品質が保てるんだって。山にいいね。
なんて感心しながら、ひたすら飲む。
ウコンサプリまで持参して。どんだけ飲む気だ。
でも、たまには、こんな過ごし方もいいよね。
雨が降ってるからいいよ、と、夕食まで小屋の中で自炊させてもらって。
なんてあたたかい小屋。ありがとうございました。
翌日は、待ちに待った晴れ!
金峰山を目指して、深い森歩きを楽しむ。
森の中を歩いて歩いて歩いて。
ここ登れば、稜線かな?!
なんて期待を何度裏切られただろう。
奥秩父の森は、ほんとに深かった。
大きなスラブを鎖で乗り越えたり、
以前、苔ガールのゲストに教えてもらった、
苔ガール一押しの最旬ショット、苔&キノコを発見しては喜んだり、
どうでもいいことばかりおしゃべりしながら、
深い、深い森歩きを楽しむ。
苔が鮮やかで、
どこまで歩いても静かな森の世界で、
北アルプスとはまったく違う雰囲気。
あと少しで山頂、というタイミングで、
やっと稜線へ。
いきなりの絶景!富士山。
こんなに大きく見えるんだね、とふたりでびっくり。
奇岩もたくさん。
岩の向こうに、八ヶ岳と瑞牆山。
ちびのあたしは、背伸びで写真を撮る。
岩と岩の間からの富士山も見つけた!
富士見平小屋で見せてもらった写真のように、
迫力のあるものは撮れなかったけど、
富士山が雲で隠れる前に出会えて、
思わず、友とふたり、笑顔になる。
前夜に、九州から来たパーティに、
すさまじい道だった、
と脅されていたけど。
たくさんの岩を乗り越えて、
なんとなく、冒険気分で稜線歩きを楽しんでいるうちに、
山頂に着いた。
山頂には、巨大な五丈岩と鳥居が。
うしろには、南アルプス!
そういえば、小さい頃初めて登った高い山が、
ここ金峰山だった。
父に連れられて、小さな足で、全身を使って、必死に登ったんだろう。
何度も、もう嫌、ってふてくされたけど、
すれちがう人に、
小さいのにえらいね、
なんて褒められて、
時には飴ちゃんをもらったりして、
そのたびに得意げに歩きだした、あの気持ちを思い出していた。
きっと、あの時に感じた、山での特別な気持ちや、
山頂で食べた、母特製のおむすびや、
すれちがう人にかわいがってもらえる、なんて甘えた感情なんかが
今の、山が好きってあたしの気持ちの根っこにあるんだろうな。
あの時は、自分から山に登りたいなんて思ってなかったような気がするけど。
今回は、自分の意思で登ったんだ。
下山後は、
富士見平小屋に張りっぱなしにさせてもらっていたテントの撤収。
乾くまで張っておいていいよ、なんて優しい言葉をかけて頂いて、
すっかり甘えさせていただいた。
ウチは、テントのお客さんも、泊まりのお客さんも一緒だから。
と、最後まで気にかけていただいて、ありがたい限り。
瑞牆山荘から、すぐちょっとで歩ける小屋なので、
お散歩がてらおいしいコーヒーを飲みに行くのも粋だよね、と友と。
小屋のすぐ下で、おいしい水が湧いていて、
その水に合わせて焙煎した、さまざまなコーヒーをオーダーできたり、
ご主人カップルお手製の皮のアクセサリーやピッケルカバーを購入できたり、
楽しみ方は、きっと無限の富士見平小屋。
いつか、お仕事でも来れるように頑張りたいな。
*
山のなかで出会う人のあたたかさや、
こわいこと、楽しいこと、笑っちゃうこと、ぜんぶ一緒に共有できた友のありがたさや、
心配しながらも、気持ちよく送り出してくれた家族の懐の深さや、
小さいあたしを、たくさん山へ連れ出して、山好きに仕上げてくれた父への気持ちや、
なにやらいろいろ感じることの多かった、山での時間。
ありがとう、また山でね。