秋のはじまり、ちいさな山旅

  20160909

夏の終わりのような、秋のはじまりの日。

友とテントと山へ出かけた。

時間に追われて、ただ、あくせくとした夏を終え、ふと一呼吸。

あたしも友も、そんなタイミングだった。

どこへ行こうー?

散々悩んで、決めたのは、瑞牆山と金峰山。

ふだんのふたりのベース、北アルプスとは、きっとちがった山になる!

そんな期待に胸をふくらませて。

20160909

今年何度目かの台風が近づき、山へ向かった日は、雨だった。

瑞牆山への登山は、早々にあきらめて、

テントを張って、ただひたすら、のんびり。

富士見平小屋の、若いご主人カップルにあたたかく迎えていただき、

テント泊なのに、さながら山小屋泊のような、至福のおこもりステイ。

電気はないんだ、と笑うおふたり。

ランプのあたたかい光が、小屋をじんわりと包んでいた。

20160909

スーパーで見つけた、ペットボトルワイン。

わざわざ詰め替えなくてもいいし、

特殊なペットボトルで、ワインの品質が保てるんだって。山にいいね。

なんて感心しながら、ひたすら飲む。

ウコンサプリまで持参して。どんだけ飲む気だ。

でも、たまには、こんな過ごし方もいいよね。

雨が降ってるからいいよ、と、夕食まで小屋の中で自炊させてもらって。

なんてあたたかい小屋。ありがとうございました。

20160909

翌日は、待ちに待った晴れ!

金峰山を目指して、深い森歩きを楽しむ。

森の中を歩いて歩いて歩いて。

ここ登れば、稜線かな?!

なんて期待を何度裏切られただろう。

奥秩父の森は、ほんとに深かった。

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大きなスラブを鎖で乗り越えたり、

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以前、苔ガールのゲストに教えてもらった、

苔ガール一押しの最旬ショット、苔&キノコを発見しては喜んだり、

どうでもいいことばかりおしゃべりしながら、

深い、深い森歩きを楽しむ。

苔が鮮やかで、

どこまで歩いても静かな森の世界で、

北アルプスとはまったく違う雰囲気。

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あと少しで山頂、というタイミングで、

やっと稜線へ。

いきなりの絶景!富士山。

こんなに大きく見えるんだね、とふたりでびっくり。

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奇岩もたくさん。

岩の向こうに、八ヶ岳と瑞牆山。

ちびのあたしは、背伸びで写真を撮る。

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岩と岩の間からの富士山も見つけた!

富士見平小屋で見せてもらった写真のように、

迫力のあるものは撮れなかったけど、

富士山が雲で隠れる前に出会えて、

思わず、友とふたり、笑顔になる。

前夜に、九州から来たパーティに、

すさまじい道だった、

と脅されていたけど。

たくさんの岩を乗り越えて、

なんとなく、冒険気分で稜線歩きを楽しんでいるうちに、

山頂に着いた。

20160909

山頂には、巨大な五丈岩と鳥居が。

うしろには、南アルプス!

そういえば、小さい頃初めて登った高い山が、

ここ金峰山だった。

父に連れられて、小さな足で、全身を使って、必死に登ったんだろう。

何度も、もう嫌、ってふてくされたけど、

すれちがう人に、

小さいのにえらいね、

なんて褒められて、

時には飴ちゃんをもらったりして、

そのたびに得意げに歩きだした、あの気持ちを思い出していた。

きっと、あの時に感じた、山での特別な気持ちや、

山頂で食べた、母特製のおむすびや、

すれちがう人にかわいがってもらえる、なんて甘えた感情なんかが

今の、山が好きってあたしの気持ちの根っこにあるんだろうな。

あの時は、自分から山に登りたいなんて思ってなかったような気がするけど。

今回は、自分の意思で登ったんだ。

20160909

下山後は、

富士見平小屋に張りっぱなしにさせてもらっていたテントの撤収。

乾くまで張っておいていいよ、なんて優しい言葉をかけて頂いて、

すっかり甘えさせていただいた。

ウチは、テントのお客さんも、泊まりのお客さんも一緒だから。

と、最後まで気にかけていただいて、ありがたい限り。

瑞牆山荘から、すぐちょっとで歩ける小屋なので、

お散歩がてらおいしいコーヒーを飲みに行くのも粋だよね、と友と。

小屋のすぐ下で、おいしい水が湧いていて、

その水に合わせて焙煎した、さまざまなコーヒーをオーダーできたり、

ご主人カップルお手製の皮のアクセサリーやピッケルカバーを購入できたり、

楽しみ方は、きっと無限の富士見平小屋。

いつか、お仕事でも来れるように頑張りたいな。

*

山のなかで出会う人のあたたかさや、

こわいこと、楽しいこと、笑っちゃうこと、ぜんぶ一緒に共有できた友のありがたさや、

心配しながらも、気持ちよく送り出してくれた家族の懐の深さや、

小さいあたしを、たくさん山へ連れ出して、山好きに仕上げてくれた父への気持ちや、

なにやらいろいろ感じることの多かった、山での時間。

ありがとう、また山でね。